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吸入器について

公開日 : 2024年4月9日(火)最終更新日 : 2024年4月16日(火)

カテゴリ・タグ : 健康づくりのお手伝い

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喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療には、吸入薬が広く使用されています。これらの薬は、気道の炎症を抑えたり、気道の拡張を促進したりすることで症状の軽減や管理を行います。

見た目が同じでも同じ作用の薬とは限りません。

主な吸入薬を「作用」と「使い方」のそれぞれに分けて、その効果や使用方法、注意点について説明します。

吸入ステロイド薬(ICS):

作用: 炎症を抑制し、気道の腫れや粘膜の腫れを軽減します。

使用方法: 各薬ごとに決まっている吸入回数、噴霧回数を吸入器で吸入します。

留意点: 長期間の使用が必要な場合もあり、効果を感じるまでに時間がかかることがあります。口の中にお薬が残ってしまうことで、口腔カンジダ(真菌感染)、声がれ、口内炎などが発生する可能性があるため、吸入後には必ずうがいをするなど適切な口腔ケアが必要です。

商品名:アズマネックス®、オルベスコ®、キュバール®、パルミコート®、フルタイド®などがあります

長時間作用性β2刺激薬(LABA):

作用: 気道の平滑筋という筋肉を弛緩させ、気道の拡張を促進します。長時間にわたり気管支を拡張させてCOPDなどの咳や息苦しさなどを改善します。

使用方法: 長期間にわたり使う場合は、単独で使用することは少なく、通常は吸入ステロイド薬(ICS)と併用されます。

留意点: COPDのみならず、喘息でも使用されることがあります。しかし、LABA単独では喘息の管理が不十分となる可能性があります。

商品名:セレベント®、オンブレス®などがあります

短時間作用性β2刺激薬(SABA):

作用: 急性の喘息発作やCOPDの急性増悪時に使用され、気道の拡張を迅速に行います。

使用方法: 症状が出た時に必要に応じて使います。通常は4-6時間ごとに使用できます。

留意点: 長期的なコントロールには適していません。頻繁に使用する場合は基礎治療が必要です。

商品名:サルタノール®、メプチンエアー®などがあります

抗コリン薬(LAMA):

作用: 気道を拡張するために、気管支の収縮をうながすアセチルコリンという物質の作用を阻害します。

使用方法: 通常は1日1回吸入します。

留意点: COPDにおいて使用されることが多く、他の吸入薬と併用されることもあります。

商品名:スピリーバレスピマット®

吸入ステロイドICS +長時間作用型β2刺激薬LABAの組み合わせ薬:

作用: ICSとLABAを1つの吸入器で同時に吸入することができます。炎症と気道の拡張の両方に対処します。

使用方法: 通常は1日2回の使用が推奨されます。

留意点: 重症の喘息やCOPDの管理に効果的であり、一度で2つの薬を吸入することができるため、使用される方の利便性が向上します。

商品名:アドエア®、シムビコート®、フルティフォーム®、レルベア®などがあります

ここまで、吸入薬の作用についてご紹介しました。

使用する吸入薬や投与方法は患者様の症状や治療の必要性によって異なります。医師の指示に従い、定期的なフォローアップを受けることが重要です。また、吸入器の正しい使い方を学び、適切なケアを行うことも治療の成功に欠かせません。

ここからは使い方の違う吸入薬のうち、DPI(ドライパウダー定量吸入器)、MDI(定量噴霧式吸入器)、SMI(ソフトミスト定量吸入器)の3種類の特徴についてご説明します。
各種の吸入器(DPI、MDI、SMI)には異なる特徴があり、それぞれの特性に応じて使用される場合があります。以下にそれぞれの吸入器の主な特徴を説明します。

DPI(ドライパウダー定量吸入器):

特徴:
ドライパウダー吸入器は、吸入時に粉末状の薬を自分の吸う力で吸入するデバイスです。
機械部分がないため、手動での操作は比較的簡単です。
吸入の際にタイミングを合わせる必要が無いのですが、吸う力が弱いと薬がきちんと吸入できず、十分な効果が期待できないおそれがあるため、ご高齢の方などで吸う力が乏しい場合には注意が必要です。

留意点:
吸入の力や速さに影響を受けるため、特定の吸入方法を学ぶ必要があります。

MDI(定量噴霧式吸入器):

特徴:
霧状の薬剤を噴霧して吸入するタイプで、吸う力が弱い人でも使うことができます。
噴霧のタイミングに合わせて吸入することが必要ですが、難しい場合にはスペーサーという補助器具を使って吸うこともできます。スペーサーはスペーサー内に1回分の薬剤を噴霧し、その中に充満した薬剤を吸入するための補助具です。タイミングを合わせて吸入する必要がないため、簡単に吸入できます。また、この吸入器は使用前によく振ってから使用します。

留意点:
吸うタイミングと噴霧のタイミングを合わせる必要があります。難しい場合にはスペーサーを使用します。
よく振ることで薬剤が均一に混ざり、正確な投与が可能になります。

SMI(ソフトミスト定量吸入器):

特徴:
ソフトミスト吸入器は、MDI(定量噴霧式吸入器)と同じように霧状の薬剤を噴霧して吸入するタイプですが、噴霧ガスを使わず、お薬を含んだ細かな霧がゆっくりと噴霧されるため、タイミングを合わせる必要がありません。そのため、スペーサーなどの補助器具を使わなくても簡単に吸入できます。
通常は使い捨てのカートリッジが使用されます。

留意点:
使用前に適切な事前準備をする必要があり、ある程度の力が必要です。
噴霧が細かいため、特に小児や高齢者が使用する際に便利です。

各吸入器は異なるメカニズムで薬物を投与し、患者様の好みや能力、治療の目的によって選択されます。使用する吸入器の選定は年齢や手技、吸う力などを考慮して決められます。

本コラムでは吸入薬を作用面と使用方法の2つの側面からご紹介しました。
同じ使用方法でも異なった作用を持つ吸入薬などもあり注意が必要です。
自己判断で使用することなく、わからないことがあれば気軽に薬剤師に相談してください。

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