薬剤師になぜ症状を聞かれるのか?
公開日 : 2024年4月9日(火)最終更新日 : 2024年4月16日(火)
カテゴリ・タグ : ご存知ですか? ~皆様に知って頂きたいこと~
皆様が一度は疑問に思ったことがあるかと思います。病院で問診票に書いたり、医師に伝えたりしてやっとのことで処方箋が発行され、いざ薬局に薬を受け取りに行ったらまたイチから説明のし直しか!と落胆された方もいらっしゃることでしょう。
体調の悪い中、改めて確認の時間を取らせていただきありがとうございます。
こちらのページでは、皆様に知っていただきたいことを説明させて頂きますので、ぜひ最後までお付き合い下さい。
1. 薬剤師が患者様に症状を確認する理由
「病院で問診票に書いたり、お医者さんに説明したりしたことをどうして薬剤師にも言わなければならないの?」
「薬剤師は処方箋に書いたとおりに薬を出すんだから症状を聞いてどうするの?」
このように感じた方はたくさんいらっしゃることと思います。同じことを何度も聞かれたらうんざりしますよね。
その理由とは、ズバリ!症状と合った薬が処方されているか確認するためです。
電子処方箋や紙の処方箋に血液検査のデータを併記して処方される病院も増えてきておりますが、基本的には処方箋に病名や薬が処方された理由は書かれていないのです。そのため処方された薬の効能効果が、患者様の症状と合致するか確認する必要があるのです。また、病歴・副作用歴や服用している薬によっては使用・併用できない薬がある場合もありますので、その点も必須確認事項となっております。
2. 症状を確認することで得られる患者様のメリット・デメリット
まず、デメリットについてですが、やはり患者様の貴重なお時間を頂戴してしまうことにほかなりません。その点、大変心苦しく思っておりますが、ぜひメリットと比較いただき、ご容赦くださいますようお願いいたします。
メリットとして、当たりまえのことではありますが、患者様の症状に合った、適切・適正な薬をお渡しできることです。
この点が、簡単なようで奥が深く、かつ患者様からは見えにくい部分かと思います。患者様から症状や病歴等の背景をお聞きすることで、処方箋の入力ミスで症状に合わない薬が処方されてしまったり、はたまた全く関連のない薬が処方されてしまったりした場合でも、処方の間違いに気づくことができるのです。
後述しますが、似た名前の薬がたくさんあり、そのせいで引き起こされたミスも実際にございます。
患者様の認識として、医師が間違っていることはないという大前提があると思います。もちろん、医師は診断・処方のプロですので、その点はもちろん全幅の信頼をしていただきたいと思います。その一方でことわざに「弘法にも筆の誤り」とありますように、人間である以上どなたにもミスの可能性があります。確率の少ないことですが、処方ミスや疑わしい点がある場合は病院に確認します。これが疑義照会という業務になります。処方ミスではなくとも、こういった確認作業にお時間を頂戴することでお薬のお渡しにかかる時間が増えてしまっている、という点もデメリットと言えるでしょう。
3.処方ミス・調剤過誤について
まず、前提として、病院または薬局でどのようにして薬を処方・調剤しているかをご説明します。
医薬品を処方・調剤する際、電子カルテやレセプトコンピュータと呼ばれるパソコンに処方箋発行や保険請求を行うための入力を行います。医薬品を検索するため、一般的に頭文字3文字(例 ビオフェルミン → ビオフ )を打ち込んで検索しますが、健康保険の適用となる医薬品数は約13,000(2023.12.20時点)ありますので、類似した名前の医薬品がたくさんあります。その過程で似た名前の医薬品を誤入力や誤選択することでミスが発生するのです。
次に、類似する医薬品の例をご提示させていただくと、ムコスタ と ムコダイン、ノルバスク と ノルバデックス、テオドール と テグレトール、マイスリー と マイスタン、セロクラール と セロクエル、アラセナ と アラミスト 等々、本当にたくさんございます。
この中で、ノルバスクとノルバデックスの事例について簡潔にご説明させていただきます。
ノルバスクは血管を拡げて血圧を低下させる高血圧の薬、ノルバデックスはいわゆる抗がん剤で、乳がんの治療目的として使用される医薬品ですが、高血圧を治療するためにノルバデックスを処方されていた、または誤って調剤してしまった、またはその逆、といったように本来の治療目的からはまったく異なった薬を服用することになってしまったという事例です。
この例は非常に残念なことですが、医師の処方ミスだけではなく、薬剤師のチェックミスによる調剤過誤も併せて発生してしまった事例です。これらの類似した医薬品をしっかり区別して、本当に患者様の症状や疾患に適合するかどうか、薬剤師はしっかり確認するために様々なことをお聞きするのです。
4. 最後に患者様へお伝えしたいこと
薬剤師になる前の勉強段階でも教わることですが、薬剤師は医薬品に対して、1文字違えば別のもの、別の薬として考えて行動しなければならないと常に肝に銘じて仕事をしております。
薬剤師の仕事は多岐にわたりますが、その多くの割合を占めるのは調剤・投薬業務です。調剤する際に処方箋を確認し、100枚、1000枚のうちの、あるかどうかもわからない処方ミスをしっかり拾い上げ、適切・適正な医療を提供する。それが私たち薬剤師の薬剤師たるゆえんなのです。
誤解のないようにお伝えしたいのですが、処方箋が間違いだらけであるなどとお伝えしたいわけではございません。
薬剤師には常日頃から心がけていることがあり、それをしっかり遂行するために皆様の大切なお時間を頂戴している、そのことをご理解していただければ幸いに思います。