今回は、インフルエンザウイルス感染症の予防と治療に関する注意点についてご紹介いたします。
近年はインフルエンザウイルス感染症が季節を問わず流行しています。今回の内容を、今後の予防や感染してしまった際のご参考としていただければと思います。
インフルエンザとは?
インフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症です。流行が周期的に現われることから、16世紀のイタリアの占星家たちがこれを星や寒気の影響(influence)によるものと考え、これがインフルエンザの語源であると言われています。インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。
感染を受けてから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状がこれに続き、約1週間の経過で軽快するのが典型的なインフルエンザの症状で、いわゆる「かぜ」に比べて全身症状が強いのが特徴です。とくに、高齢者や、呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者、糖尿病などの代謝疾患、免疫機能が低下している患者では、それらの疾患の悪化とともに、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなることが知られており、入院や死亡の危険が増加します。小児では中耳炎の合併、熱性痙攣や気管支喘息を誘発することもあります。
わが国のインフルエンザの発生は、毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加し、4~5月にかけて減少していくパターンが一般的です。
インフルエンザの予防
ワクチンの接種
インフルエンザワクチンの接種により、感染する可能性を低減させる他、感染した際に重症化する割合も低減できます。ただ、ワクチンの効果が現れるまでは接種から2週間程度かかるのと、ワクチンの効果は半年程度と言われています。接種する際には、流行する時期の少し前に接種するよう心がけましょう。
マスクの着用、うがい、手洗い
コロナ禍で皆さんがマスクを着用されている時にはインフルエンザの患者は殆ど見られませんでしたが、新型コロナウイルス感染症の5類移行後にマスクを着用される方が減ってから、感染者が急増しました。マスクはウイルスの侵入と、感染者による飛散を防ぐことが出来ます。完全に防げるものではありませんが、流行期にはマスクの着用が効果的です。
また、うがい・手洗いにより、インフルエンザ以外にも様々な細菌・ウイルスを除去できます。
帰宅後等には、うがい・手洗いを心がけましょう。
インフルエンザの治療
インフルエンザ治療薬について
インフルエンザ治療薬は、体の中のウイルスを退治する薬では無く、ウイルスの増殖を抑える薬です。そのため、ウイルスが沢山増殖してしまった後では十分な効果が期待できません。ウイルスが十分に増えていない、「発症から48時間以内」に使用する必要があります。高熱・体の節々の痛みなど、インフルエンザが疑われる症状が出た際には、医療機関を受診して検査をしてもらいましょう。ただ、感染初期にはウイルスが少なすぎるために検査で陰性と判定されることが多くあります。発症後6時間程度経ってから受診・検査をすると陽性と判定される割合がかなり高くなると言われています。
解熱鎮痛薬について
5歳以下の子どもの場合、インフルエンザの際に、特定の解熱鎮痛薬を使用するとインフルエンザ脳症のリスクを高めてしまうと言われています。安全なお薬としては、「アセトアミノフェン」という成分の解熱鎮痛薬は、インフルエンザの際に最も安心して使用できる解熱鎮痛薬です。高熱や頭痛・体の節々の痛みでご自宅にある解熱鎮痛薬を使用したい際は、自己判断で使用せず、使用して良いのか避けた方が良いのか、まずは薬剤師にご相談下さい。
それ以外のお薬
インフルエンザに使用される漢方薬もあります。そのうちの1つでインフルエンザ感染初期に効果があるとされる麻黄湯は、インフルエンザによる様々な症状を和らげる働きがあり、病院での処方の他、薬局やドラッグストアでの購入も可能です。薬剤耐性ウイルス発生等の問題が無い漢方薬は重宝されておりますが、必ずしもすべての人に効果がある訳ではありません。体質によっては副作用が現れる事もあります。医師・薬剤師にご相談の上ご使用下さい。
日常生活における注意点
- 高熱が続くと、普段より多くの水分が体の外に出てしまいますので、十分な水分補給を心がけましょう。その際は、経口補水液等を飲むのがより効果的です。
- インフルエンザウイルスは低温を好み、湿度の高い環境に弱いと言われています。部屋の温度・湿度にも気を配り、室内の温度は20~25℃、湿度は50~60%程度を目安にしましょう。
体の抵抗力を高めるためにも、まずは日ごろから適度な運動と十分な睡眠・栄養を取り、風邪やインフルエンザにかかりにくい体づくりに取り組みましょう。
引用・参考文献:国立感染症研究所HP インフルエンザとは