今、オーバードーズという単語がニュースを騒がしています。皆さんはこのオーバードーズについてどれくらいご存じでしょうか。
そもそも医薬品には適正な量が設定されています。それ以上でもそれ以下でも医薬品の正しい効能・効果を期待することは出来ません。しかしながら医薬品の中には適正量を超えて過剰摂取した時に麻薬使用時のような多幸感が得られるものがあります。それを大量に服用し精神的苦痛から逃れる自傷行為、これがオーバードーズであり薬物乱用の一種です。
麻薬、覚せい剤使用では犯罪となってしまうため、薬局、ドラッグストアで入手できる一般的な医薬品がこのオーバードーズの使用に選ばれています。多くの方が簡単に入手できる環境にあることから、薬局ではオーバードーズの危険性のある医薬品について販売制限を設けています。1人1包装限り販売としている医薬品にはそのような成分が含まれるものがあります。
ジヒドロコデインはコデインと同様にモルヒネ系鎮痛薬に属し、薬理作用はモルヒネに準じます。中枢抑制作用により鎮痛、鎮静、多幸感が得られる事で過剰摂取に使用されています。また、クロルフェニラミンとの組み合わせにより精神依存性が著しく増強されることが報告されています。
ブロモバレリル尿素は神経細胞の興奮を抑え、鎮静、催眠作用を発現します。連用により薬物依存が生じます。こういった成分が含まれる総合風邪薬、咳止め薬などがオーバードーズに使用されています。
さて、このオーバードーズの何が問題なのかというと、勿論医薬品の適正使用ではないという事から、急激な副作用発現、長期服用により依存症発現に関与する可能性が挙げられます。先にお伝えした通り薬物乱用行為ですので、思わぬ健康被害につながる可能性が高いです。しかしながらそれ以上に問題なのが、この行為そのものが自傷行為であるという事です。
多くの依存者には共通点があります。
- 自己評価が低く自分に自信が持てない。
- 人を信じられない。
- 本音を言えない。
- 見捨てられ不安が強い。
- 孤独で寂しい。
- 自分を大切にできない。
このように心に大きな不安、影を抱えた子供たちがオーバードーズの薬物依存者に多いことが分かっています。オーバードーズをしていた子供たちの主な理由として“自分が絶望している様を見せつけたかったから”、“自分が本当に愛されているかを確かめたかったから”という言葉が挙げられています。その根底にあるのは大人からの心無い言葉や行動です。実際には実現されない強い脅迫の言動により、強く傷ついた子供たちは心を閉ざしオーバードーズへと向かっていくのです。多くの子供たちはオーバードーズが危険な行為であると認識していながら、孤独を感じないで済む仲間との繋がりを大切にし、不安や寂しさを紛らわせています。
オーバードーズは“ダメ、ゼッタイ”だけでは片付けられない大きな問題が隠れています。本音を言えない子供たちに少しでも耳を傾けられる大人が増えることで、このオーバードーズの問題は解決に向かう可能性があることを、今回のコラムで多くの方に気づいて頂けたらと願います。
オーバードーズは心の病気です。依存症は取り上げるだけでは治りません。